年をとっても自分の歯を残そうという「8020運動」への取り組みが見られる一方で、歯を抜いても何とかなるという考えもあるようです。入れ歯技術やインプラント技術の進歩で、抜歯への抵抗が少なくなっていることも影響しているのかもしれません。
日本人の国民病ともいわれている歯周病は、高齢になるほど罹患率が高く抜歯のリスクも高くなります。超高齢社会において増えていると思われる高齢者の抜歯について考えてみたいと思います。
まず、初めに確認しておきたいのは、抜歯は高齢者に限らずそれなりのリスクを伴うということです。抜歯は歯槽骨を口腔内にあらわにする行為ですから、どの年代でも感染症などのリスクがあります。
高齢者は一般的な抜歯リスクに加え、生活習慣病などの持病を持っていることが多く、免疫機能や生理機能が低下している傾向にあります。
高齢になるほど歯槽骨が硬くなり、歯が抜けにくくなっています。歯を抜きにくいということは、抜歯に時間がかかるということです。また、高齢になるほど歯はもろくなりますので、器具でつかめないときは残根となることもあります。傷口の治りも遅く痛みが長引くこともあります。若いと歯茎はキレイに治りやすいのですが、高齢の場合はくぼみとなって抜歯跡が残ることもあります。
ステロイド剤を服用しているなど免疫機能が落ちていると、感染症のリスクがより高くなります。免疫機能が落ちていなくても心臓に持病を抱えている場合、感染性心内膜炎を発症しやすくなります。骨粗しょう症で治療中の場合は、薬の影響で抜歯後、歯槽骨が腐敗してしまうことがあります。認知症を患っている場合、歯科治療自体が難しくなることもあります。
高齢者の場合、リスクを考えて虫歯や歯周病などがあっても抜歯をしないと判断せざるを得ないこともあります。
これらを踏まえると、高齢になるほど抜歯を防ぐために定期的なメンテナンスが大切だといえるのではないでしょうか。抜歯のリスクは、中年ごろから徐々に高まってきますので、気になるところがありましたら早めに歯科医院に相談することをおすすめします。



