
入れ歯とは義歯(ぎし)ともいいます。虫歯や事故による外傷などによって自分の歯を失ってしまった場合に、人工的にその歯を補完するものです。
歯は皮膚などとは異なり、傷ついたり欠けたりした場合に自然回復するということがありません。似たようなものであっても骨の場合は骨折しても固定して安静にしていればそのうち再生しますが、歯の場合はそういうこともありません。
一方で、仮に歯の一部を失った場合でも別に出血し続けるわけでもないですし、耐えられないような痛みがいつまでも続くわけでもありません。多少は見映えが悪くなりますし、食べ物の咀嚼にも多少の不便は生じるものの、大して問題でもないし、治療には費用も時間もかかるからという理由でそのまま放置しても構わないのではないかと思っている人もいるかもしれません。
しかし、それは大きなまちがいです。
確かにどこかの歯を一本失ったとしても、短期的にはそれ以上のマイナスが起こるわけではなく、ただ我慢すれば済むことではないかと思われるかもしれません。でも、全体として、また長い目でみれば決してそれ以上何も変わらないわけではありません。
最近では新型コロナウィルス対策のためにマスクを着ける1日中過ごすことが当たり前になりました。マスクで口元が隠れていることをいいことに、ちゃんと歯を失ったところを治療しないままの方もいます。歯は見た目だけの問題ではないのです。
というのも、失った部分に対して、周囲の歯がそれをあたかも補おうとするかのように移動する性質があるからです。つまり、失った歯の両側の歯は、空いたスペースに向かって傾いていく傾向があります。失った歯と本来噛み合うはずだった上下方向の歯は、同じく空いたスペースに向かって伸びていく傾向があるのです。
これにより見た目は単に一本の歯を失っただけのとき以上に悪化しますし、食物の咀嚼や発声に対しても悪影響が生じる可能性があります。ですので、多少我慢すれば済むことなどと軽く考えず、入れ歯、義歯でしっかりと治療する必要があるということです。
入れ歯や義歯は、広い意味では人工的な歯の全てを指しますが、治療法によっていくつかの種類に分類されることが多いです。狭い意味での入れ歯とは、取り外しのできる人工の歯のことで、残っている歯にバネをかけて固定するタイプのものです。一方で取り外しのできない人工の歯もあり、こちらはインプラントと呼ばれます。
これは、残っている歯に対してバネで固定するのではなく、顎の骨に対して人工の歯をボルトで固定するものです。ボルトで固定してしまいますから取り外しはできませんが、その分安定していてあたかも自分自身の歯であるかのように咀嚼することができますし、見た目でも義歯とは分からないくらいになります。
インプラントも義歯、そしてブリッジもそれぞれ長所と短所があります。歯を失ったところの治療は担当の歯科医師としっかり相談してから決めてください。